沖縄大型eスポーツ大会「3大会同時開催」レポート!

 2019年7月14日に沖縄コンベンションセンターで開催された、
「沖縄国際大学・琉球大学 eスポーツ対抗戦」
「Okinawa Onedot e-Sports Summer Fes」
「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019」

沖縄初の3大会同時開催という試みに湧いたイベントの様子をレポートします!


かつて無いスケールで開催された大会の熱気に圧倒!

 天候に恵まれ爽やかに輝く、お馴染みコンベンションセンターの噴水を抜けると、宜野湾の海が一望できる「会議棟」がある。この日たまたまお隣で開催されていた「おでかけライブ」の「展示棟」と違い、こちらに入場した人は多くないのでは。

今回の大会は、サブカル勢お馴染みの展示等の隣、会議棟で開催された。

 明るいガラス張りのエントランスから会場内へ足を進めると、超大型のスクリーンに投影されているテスト画面の他に、向い合せにセッティングされた対戦台が12台6セット、またチーム対戦を多くのギャラリーが観戦出来るエリアと、3つのエリアが一堂に設置されたこれまでに無い規模のeスポーツ会場が現れた。まだ開場前という事もあり機材チェック中だったが、定期的にeスポーツ大会を開催しているOkinawa Onedotが主催する対戦台エリアでは、すでにスタッフ同士での調整という名の戦いが始まっていた。

試合という言葉とは別に参加者すべてが楽しそうにしている印象なのは、eスポーツが総合エンターテインメントコンテンツ、ビデオゲームをツールとして用いるからだろうか?設営作業すら楽しげだ。

 在沖のゲーム好き自らの手によって、同族のゲーム好きの為に、多くの人にeスポーツを好きになってもらいたいという気持ちで開催されているイベントなので、設営スタッフも選手として参加するし、隙きあらば「練習試合」が始まってしまう熱気あふれる会場だ。


大スクリーン、大音響で会場に広がる「第1回 沖縄国際大学・琉球大学 eスポーツ対抗戦」

 3大会の主催のひとつ、株式会社ザ・ウェーブ代表取締役 住吉基伸氏による開会が宣言されると、大きな拍手が湧き、さっそく会場正面の大型スクリーンで沖国大と琉大のeスポーツサークルによる対抗戦が始まった。

 自身も相当な格ゲーマーで全国大会出場の経験もあるという比嘉周作さんが司会進行として登壇。ザ・ウェーブからも各ゲームタイトルに詳しい解説者が付き、試合の展開や選手の情報など解りやすいトークでギャラリーにも熱気が伝わる。そのギャラリーでは、すでに校内にサークルが立ち上がっており普段から交流もあるという両校の学生たちが、今回イメージカラーとして沖国が赤、琉大が青のバンダナをそれぞれ選手以外も身につけ応援している。

普段から交流のある両校サークルによる対抗戦は、比較的和やかなムードで行われた。

 出場2校のサークルメンバーの他にも、在沖他校から設営や運営進行に協力してくれているeスポーツサークル立ち上げ準備メンバーも数多く試合の行方を見守っており、たびたび歓声が湧いていた。

 「実況パワフルプロ野球2018」で一方的な試合を見せた琉大であったが、その後の「IdentityV」でムードを逆転してチームワークは発揮、流れを変えた。続く「Shadowverse」では再び相当拮抗した試合展開を見せたが、沖縄国際大学eスポーツサークルが押し切って最終的に見事「沖縄国際大学・琉球大学 eスポーツ対抗戦」を制した。

拮抗ムードを破り第一回の勝利を掴んだのは、紅が映える沖国チーム。

同時に開催されているOkinawa Onedot主催の「e-Sports Summer Fes」でも、どんどん予選が進んでいく

 今回の「3大会同時開催」が凄いのは、大型スクリーンで対抗戦が実況開催されているのと同時に平行して、本来ならそれ単体で開催されるレベルの試合が進行している所だろう。

 沖縄ワンドット主催のSummer Fesに事前エントリーを済ませている選手達は、トーナメント戦管理サービス「Challonge」で決まったカードを戦い抜いていく。こちらの参加選手は普段から対戦を重ねる戦友が多く、今回始めて参加する一般の選手を巻き込んでメインステージに負けない熱気で盛り上がっている。過去の大会、別のイベント、普段集まるアーケード、昨日の自宅、さっき空いてた隣の台でetc…… あらゆる場で隙きあらば腕を磨き続けてきている猛者ばかりだ。各選手が自分の得意なタイトルで、メインステージで開催される決勝戦へ向けコマを進めて行く。

どこかホッとする格ゲー対戦台の風景。

 このエリアで印象的なのは、かつてどこの街でも見かけた「対戦台に座ったゲーマーの背後で白熱して見守るゲーマーたち」という当たり前の光景だ。家庭用やポータブルのゲーム機が進化して、またネットワークが取り巻くゲーム世界の拡張。それは多くの革新的な楽しみを我々ゲーマーへ与えてくれたが、同時に「街角のゲーセン」の姿も変えてしまった。

 今でもそういうシーンは完全には失われてはいないが、それが地域間の距離を飛び越え、しかしネットワークには無いリアルな距離でこうして出現している事がストレートに嬉しいし、懐かしいなんて言っている場合ではなと感じた。そういうeスポーツの波が来ているのだ。

隙あらば対戦。いたる所で試合。僕らはそうして生きてきた。

さらに「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」ウイニングイレブン部門、沖縄県代表決定戦が繰り広げられている!

 会場中央の巨大スクリーンを挟んで格ゲー中心の対戦台群の他方では、白熱のチーム戦に釘付けで試合観戦が盛り上がっている。このエリアでは今年9月に開催される茨城国体。それに合わせて展開される文化プログラム事業の一環で、都道府県対抗によるeスポーツ選手権というのは全国初の試みで「ウイニングイレブン沖縄県代表決定戦」の予選が開催されている。

もう一箇所の「eスポーツ対戦会場」レイアウト。選手と試合の様子に釘付けのギャラリー。

 「ウイイレ」のプレイ層の影響か、国体と連動する全国規模だからか、こちらのブースもまた他とは違ったムードの熱量を感じた。 まずサッカーというリアルスポーツを題材にした3人のチーム戦である事が、eスポーツとしての「スポーツ」「試合対戦」ムードを盛り上げているように見える。試合中何度も訪れる攻防戦に行動の指示が飛び交い、結果に一喜一憂リアクションも大きい。このエリアで観戦を楽しんでいると、なるほどゲームの対戦は「スポーツ」なんだな、と感じる。

既存スポーツ、サッカーが題材のeスポーツだからか、ムードの成熟度合いには一日の長あり。プレイも観戦も盛り上がっている。

 選手層も10代20代の若者だけでなく、社会人それも会社内にあるサークルからの参加といった選手もいた。また試合の様子を写すギャラリー向けモニタを見守るのは女性や子どもなど選手の家族も多く、出場選手に声援を送る姿はまさしくスポーツ観戦といった雰囲気だった。


各大会の決勝進出者が出揃い、いよいよ大会はクライマックスへ

 会場内3箇所で同時進行していた各試合を勝ち抜いた選手達は、ついに大型ス 会場内3箇所で同時進行していた各試合を勝ち抜いた選手達は、ついに大型スクリーン前に集結、いよいよ決勝戦が始まった。大学対抗の最終戦「ぷよぷよeスポーツ」、続いて都道府県対抗eスポーツ選手権の「ウイニングイレブン2019」という流れで進行して行く。都道府県対抗eスポーツ選手権は、サッカーのユニフォームに身を包んだ司会者が軽快なトークと実況解説で客席を沸かせていた。

 また、ウイイレはエキシビジョンマッチとして、少年の部県代表に出場を決めた「スティーム・ラボ」と、オープン部門勝者「ライフ」の試合も行われた。「STEAM OKINAWA」というICTスキル活用人材育成プラットフォームで結成された「スティーム・ラボ」は、オープン部門で惜しくも決勝戦敗退してしまった師匠筋の敵討ちとなるこの試合だったが、前半2点を先制して折り返したオープン部門覇者「ライフ」が、後半もセットプレイから3点目となる追加点。さらに試合終了間際に決定的な得点を許してしまい、試合終了となった。

国体のように、当たり前のように全国大会が開かれる日に期待したい。

 プログラムの最後を締めくくるのは、格ゲータイトルの多いOnedotの各部門。司会は再び比嘉周作さんが実体験や感想を伴う生きた声で司会進行を盛り上げてくれた。各ゲームタイトルと選手に造詣が深い解説者と共に、否が応でも会場は大いに盛り上がってゆく。

 決勝戦の最初を飾るのは「THE KING OF FIGHTERS XⅣ」 アテナを操る「もりもっち」選手と戦うのは、京使い「お塩」選手。解説から「火炎と言えばお塩」というフレーズも飛び出したが、キャラをシュンエイに切り替え猛プッシュ、アテナもりもっりを追い込む。ここでまさかのアテナからシュンエイへキャラチェンジの同キャラ対決!もりもっち選手がSummer Fes最初の優勝を勝ち取った。

 次のタイトルは「鉄拳7」。前回の大会覇者「クリス」選手と、その後3、4戦手合わせするも勝ち無しとなる因縁の対決「まもる」選手。クリス選手は前回の勝利も飾った7から参戦の見た目は可愛いトリッキーなダンサーキャラ「ラッキークロエ」。対するまもる選手は、もはや鉄拳古参の足技使い「ファラン」。大味な攻撃が特徴のクリス・ラッキークロエの一撃が容赦なくまもる・花郎に刺さるが、倒しきれなかった隙きを突いて壁際ありマップを活かしての大逆転を魅せる。最後の最後まで勝利数タイでもつれ込むものの、優勝を勝ち取ったのはクリス選手だった。お互いの笑顔と握手がとても印象的な試合となった。

 沖縄格ゲーシーンで外せないこの人、THE WAVEに所属しての参戦となったK太選手とヤムッチャ選手が対決するタイトルは「MELTY BLOOD Actress AgainCurrent Code」。シリーズ初出は、キャラクター・世界観に定評があり、今なお大ヒットゲームタイトルにも繋がる「ビジュアルノベル同人ゲーム」の系譜と、同じく「同人格闘ゲー」がタッグを組み2002年末に登場した格闘ゲームだ。その後も長年に渡り脈々と続く、アーケードへの逆進出も成し遂げた「純ゲーム好きの為のゲーム好きが生み出した対戦ツール」シリーズ最新作。とは言え、それでも2016年の作品となる。

 これだけ長期に渡って楽しまれ続けているというだけで、このタイトルの持つ対戦ツールとしての魅力が伝わってくるが、沖縄という場においては更にゲーム・ミュージックを中心にアニメや地元CMソングなどでも活躍中の在沖サウンドクリエイター来兎さんの出世作。色々と感慨深い作品なのだ。

 主に白レンを操り挑むヤムッチャ選手に対し、K太選手は赤主秋葉から遠野秋葉にスイッチ。ヤムッチャ選手もアルクェイドで対応して勝敗は決せずもつれ込む展開に。二人は他のゲームタイトルでも全国大会を経験し、プライベートでも長年交流があり、お互いを知り尽くしているという間柄だ。ラストバトルはヤムッチャ選手が白レンにキャラを戻し、今回の戦いを制した。

一瞬にして決まる明暗。これぞeスポーツ!

 双方死力を尽くした戦いの最後、白レンの一撃が秋葉に刺さった時、頭を抱えうずくまるK太選手と両拳を突き上げ席を立つヤムッチャ選手の対比が、何度も繰り返されて来てなおこの戦いの場の大きさを感じさせた。


沖縄eスポーツのこれからに挑む人々

 結論と感想から言わせてもらうと、十分楽しめた沖縄ではかつて無い一日となった。しかし、大規模の「同時開催」に圧倒される様々なボリューム感は確かにあるのだが、同時にまだまだ気持ちに追いついていない現状も感じる事があった。

 1ゲームタイトルだけを扱えば良い都道府県対抗ウイイレ対抗戦。コンシューマ機を対戦台形式で常設しておくOnedot e-Sports Summer Fesと違い、メインステージという扱いでもある巨大スクリーンで繰り広げられる各試合は、様々なプラットフォームで数多くのゲームタイトルで展開される。それは事前のプログラムで解っている事ではあるが、同時開催で運営の人手不足なのだろうか? 対戦ツールが毎回変わるメインの大型スクリーンでの機材セッティング時間が気になってしまった。

 軽快な語り口で盛り上げてくれる司会者、楽しめるポイントや選手の情報を語ってくれる解説者、そして何よりスピーディーな展開で観戦者を魅了する試合が楽しいだけに、その合間合間に度々訪れる無の時間。同時開催で進行していた前半の予選パートは、まさにその同時開催が幸いして飽きる間など無かったのだが、気分も最高潮に盛り上がった決勝に水を差された気分になってしまった。無理を承知で、その間の時間を上手く利用したタイトルやキャラ・選手の紹介などを映像で見られたら…… そんな期待が広がってしまう。

 どの選手達も試合を開始すると華麗なプレイを披露する「アスリート」だった。しかし、登壇し戦う前にも最強の選手だという覇気を期待してしまう。でも、今はまだどうしても「いつもの身近なゲーム仲間」の姿なのだ。毎日繰り返す対戦が「練習試合」なら、この晴れの舞台は「eスポーツの試合出場」の場であろうと思う。見ている方は気楽なもので「だって顔見知りとのいつものゲームじゃないもん」という心構えができちゃっているのだ。

 一方で、白熱した試合の後マイクを持つ優勝者の笑顔やガッツポーズは流石だと感じた。戦いを制した戦士の顔と言葉に変貌している。ここでも茨城国体、ウイニングイレブン部門参加選手たちはチーム戦を制して勝ち上がってきた自信を表情に感じたし、優勝者へ送られた勝利のユニフォームが全国大会進出へ華を添えていた。「ちょっと規模の大きな、ゲーマーの大会」から「eスポーツの試合観戦」にシフトしていくのは、こういったムードなのかもしれないと感じた一日だった。


ゲーマーみんなにできる事、一緒に見たい光景

 優勝者には主催運営のTHE WAVEより優勝トロフィーが送られた。それぞれに勝利を掴んだ笑顔があった。きっと遠くない将来、沖縄でも。ひょっとしたら、この「沖縄コンベンションセンター」で。もしかしたら劇場棟で…… まさか展示棟で?! 試合が始まる前から輝いている、憧れのeアスリート達が見られるのだろう。

 こうして閉幕した、沖縄の夏を熱くした県内初「3大会同時開催」eスポーツ大会に、今後の沖縄eスポーツシーンの未来を見せつけられた一日だった。

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コメント

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